ーーー自分。
それは無力な殻。いつもいつも他の、周りの人に心配をかけて。自分じゃ何も出来ないくせに。
それなのに侑士ときたら。
「お前が好きやねん・・。なぁ、俺と付き合わへん?」
なんて言ってきた。一体、俺のドコらへんがスキ、なんだ・・?
昨日から続いていた雨がやみ、コンクリートの窪みに水が溜まっていて、太陽の光が水面に反射していて眩しかった。
今日は青学との練習試合。都大会を着々と勝ち上がっているアイツらは、今いわゆる「お休み」らしい。まぁひたすら試合するといっても一応俺みたな受験生だって居る訳で、んでもって気が抜けない時期だから主催者側も無理強いは出来ない。そんな時期で、しかもせっかくの休みなんだから勉強するなり遊ぶなり寝るなりすればいいものを、あそこの連中はテニス一筋なもんだから休まず練習するらしい。・・・まぁ、勝ち上がってるからといって休むんじゃあ何の意味もないけどさ。
「しっかし青学の奴らほんまにウチ指名してくるとはなぁ・・。確かに跡部が約束した、ゆうんは聞いとったけど。」
「本当だよな〜!俺らは休み普通に過ごしたいのにっっ」
そんな訳で我が相棒・忍足侑士と青学に向っている。文句をひとしきり吐いた後。
「岳人・・こないだの話なんやけど・・・。」
ーーーきっきた!!!実はこの日の為にと「台本」なる物を俺は書いた。だって、自分が上り症なのはわかっているから。とんでもない事を口走ったら、後々メンドイじゃん?
なのに俺は更なる緊張の所為で頭の中にあった台詞を忘れてしまったらしい。まるで金魚が餌を食べている時の様に、言葉のないまま口をパクパクさせる。
「おっ俺・・さっ・・・!実は、・・」
「よぅ、向日に忍足♪」
・・・え?
「今日晴れて良かったな〜!」
「おはようございます、忍足先輩に向日先輩!!今日の試合頑張りましょうね!」
穴戸に鳳。タイミング最悪のご登場・・・っ!!!
「・・・あァ・・。そうだな・・」
「じゃあまた後で!!!」
爽やかかつ豪快な嵐は、それだけ言うと俺達よりも前を、仲良く自転車を2人乗りしながら走っていった。
「・・・んで?俺実は・・何や?」
2人が居る間ずっと無口だった侑士が早口で問う。・・こうなったらアドリブでいくしかない。
「俺も・・侑士の事好き。」
1人言のように、呟く。そして、更に。
「でも・・わかんないんだ。侑士が俺を好きな理由・・・・・自信ないよ、俺っ・・」
「シィーッ」
と言いながら侑士は自分の口に人差し指をあてて、俺の顔を覗き込む。
だって、自信ないよ・・。侑士は格好良くて、背高くて、頭良くて、運動神経だって凄い。おまけに・・・・・・・・。
ーーーーーーヤサシイ。
「岳人?何も自信なくす事なんてないやろ?俺が岳人に惚れる理由なんてぎょうさんあるで?」
「じゃあ言ってみそ?・・試しに。」
提案した後、侑士の口からは「嘘だ」と当の本人ですら否定する事ばかりが飛び出す。でも、何故か嬉しかった。胸が熱くなる。侑士程の人間が、あんなにも自分を思っていてくれたなんて。そしてーーーーー
「な、なんや??!どないしたん?????!がっ岳人?!!!?」
俺は、頬に一筋の涙の線を引いていたーーー。
スキのイミ(後半)へ続く.......
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